「あのクリニックは〇〇ccも吸ってくれたらしい」
「他の人は〇〇cc取れたのになのに私は〇〇ccだった」
「韓国のクリニックは日本よりもたくさん吸引するらしい」
このような話、聞いたことはありませんか?
しかし、実は吸引量(cc)は 他院と比較しても意味がありません。
その理由を、わかりやすく解説します。

ちょうど太ももの裏側の吸引が終わったタイミングで撮った写真です。
この吸引量は、何ccと数えますか?
上の黄色っぽい部分が脂肪で、下の赤っぽい部分が水溶性の成分(主に麻酔液と血液)です。
次からは、日本と韓国の”吸引量”の数え方について解説します。
まず、韓国をはじめとした海外のクリニックの多くでは、ボトルに回収された総量をそのまま吸引量としてカウントします。
例えば上の写真のようにボトル全体が2100ccであれば、「2100cc吸引した」という表現になります。
(2000ccを少し超えた部分については、どうしても目視の概算になります。)
一方、日本では2100ccのうち、麻酔液・血液などの水溶性の成分を差し引き、
2100cc(総量)- 500cc(水溶性成分)= 1600cc
と表記する方法が一般的です。
ただし、日本の中でも海外方式で総量をそのまま記載するクリニックもあり、混乱を避けるために「純脂肪1600cc」といった言い方をすることがあります。
総量カウントでは、麻酔液を多く使用した場合や、出血が増えた場合でも、実際以上に“たくさん取れた”ように見えてしまうことが問題です。
そのため私は、脂肪量のみを記載する方法の方が、患者さま側にとってより正確な情報に近いと感じています。
ただし、これはあくまで文化の違いであり、どちらが正しいと一概には言えません。
実際、SNSでは細身の方が海外クリニックのPRとして「◯◯◯◯cc取れました!」と投稿したところ、
「そんなに取れるわけがない」と非難されたケースがありました。
しかし数字のからくりを理解していれば、炎上するほど不自然ではないことが分かります。
そしてこの違いが、
「韓国の方が日本よりたくさん吸ってくれる」
という誤解の大きな要因となっています。
さて、次にこちらの写真をご覧ください。この吸引量は何ccに見えるでしょうか?

日本方式で計算すると
2050cc(総量)- 650cc(水溶性成分)= 純脂肪1400cc
と判断されます。
しかし実はこれ、先ほどのボトルと同じ脂肪。違うのは「2時間ほど放置しただけ」です。それだけで、約200ccも数字が減ってしまいました。
なぜかというと、時間が経過すると脂肪細胞が壊れて中の水分が抜け、その水分が下層の水溶性成分に移動するからです。
翌日まで放置すれば、さらに脂肪層は薄くなるでしょう。
つまり、
いつ計測するかで、吸引量の数字は大きく変動してしまうのです。
例えば二の腕を左右で吸引する場合、先に吸った側の脂肪層がしぼんでしまうと「同じ量を取っているのに、少なく計測される」
という左右差が起きてしまいます。
そのため当院では
「その部位の吸引が終わった直後」というタイミングで統一して計測しています。
結果として、麻酔から目覚めた際に患者さまが目にする量とは、多少の誤差が生じます。
ただし、計測のタイミングは業界で統一されておらず、クリニックごとに基準が異なるのが実情です。
計測方法やタイミング、注入する麻酔量によって、吸引量の数字は大きく変動します。
そのため、クリニックごとの吸引量を単純に比べても意味はありません。
「二の腕で100ccは少なそう」「顔で100ccは多そうだな」──その程度の“なんとなくの目安”にしかならないのが実際です。
そもそも、本来我々が求めているものは数字ではありません。
多くの方が求めているのは「どれだけ取れたか」ではなく、
“細く、美しく仕上がること” のはずです。
だからこそ、
吸引量よりも変化の美しさでクリニックを選ぶことが大切です。
しっかり取るべきところを取りつつ、自然で美しい仕上がりを目指しましょう。