最近SNSや美容クリニックで話題のGLP-1受動態作動薬「マンジャロ(Mounjaro)」。そのダイエット効果が注目される一方で、実際には深刻な副作用に悩まされている人も少なくありません。
今回は、マンジャロの使用によって救急搬送された女性の実体験をもとに、知っておくべきリスクや注意点を詳しく解説します。
マンジャロは、2型糖尿病治療薬として開発されたGLP-1受容体作動薬の一種です。血糖値のコントロールだけでなく、食欲抑制や満腹感の持続に効果があるため、近年ではダイエット目的での美容医療としての適応外使用が広がっています。
しかし、本来は医師の厳格な管理のもとで使われるべき糖尿病の薬であり、自己判断での使用には大きなリスクが伴います。またオンラインや美容クリニックでの処方など、適切とは言えない処方が横行しており、社会問題になっています。
ある30代の女性は、美容目的でマンジャロを自己判断で使用。最初の1本を接種した直後から強い吐き気を感じ、体調不良に。
SNSで調べると、「最初はつらいけど、慣れれば平気」といったポジティブな投稿が多数見つかったため、安心して2本目を接種してしまいました。
ところが、2本目を接種したあたりから、ふらつきや激しい嘔吐が続き、最終的には唾を飲み込むことも困難な状態に。これは明らかに危険な症状です。
命の危険を感じた彼女は、すぐに救急車を呼びました。
救急搬送されるも、適応外使用で投与したマンジャロによる体調不良だったこともあり、3軒の病院をたらい回しにされたといいます。
この背景には、近年の美容医療トラブルの増加により、リスクのあるケースへの対応を避ける医療機関が増えていることがあるようです。
女性の体に何が起こっていたのか、検査結果を確認させてもらったところ腸閉塞(麻痺性イレウス)の可能性が高いと判断しました。実はマンジャロなどのGLP-1製剤には、胃腸の蠕動運動を抑制する副作用が知られており、これは悪化すると強い便秘、吐き気、腸閉塞などを引き起こす可能性があります。
GLP-1製剤による麻痺性イレウスの報告(Kurashiki Y, Tamada D, Tabuchi Y, Ozawa J, Yasuda T, Okita K, Imagawa A, Kanefuji H, Funabashi T, Shimomura I. Two Cases of Paralytic Ileus Associated with the Administration of Liraglutide. Tonyobyo (Diabetes). 2012;55(12):982-986. https://doi.org/10.11213/tonyobyo.55.982)
・食物が腸内で滞留し、吐き気や嘔吐を引き起こす
・脱水症状や電解質異常を招く
・重篤な場合、手術が必要なケースも
マンジャロにはその他にも、低血糖、急性膵炎、ケトアシドーシスなど重篤な副作用が起こるリスクがあります。
副作用が出たからといって、すぐに薬の効果が切れるわけではありません。マンジャロは1回の投与で約1週間効果が持続するため、副作用が出た場合でも長時間苦しむことになります。
これがマンジャロの最大の落とし穴です。
私の個人的見解ですが、ダイエット目的でのマンジャロ使用は、BMI35以上の高度肥満の方に限定すべきだと考えます。
それ以下の方にとっては、リスクと効果のバランスが取れない可能性が高いからです。軽度肥満や美容目的で安易に手を出すのは非常に危険です。
・副作用は深刻なレベルに達することがある
・SNSの個人の感想は信じすぎない
・自己責任のリスクは想像以上に大きい
・病院に受け入れてもらえない場合もある
・専門医の診断とサポートを受けながら使うことが必須
命に関わる可能性もあるGLP-1製剤。マンジャロを検討している方は、信頼できる医師と相談の上、慎重な判断をしてください。
動画では、実際に被害に遭われた女性にお話しを伺いました。
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